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皆さん、「D30」というウェブ・サイトをご存知でしょうか? 世の企画マンの間で大いに話題になったこのサイトのコンセプトは、何と 「デブによるデブのためのライフスタイルマガジン」!! 前代未聞ですね(笑)。 デブのためのレストラン紹介、デブでも出来るスポーツ、デブに美味しい旅企画など、徹底的にDな人にこだわったメディアです。 こんな企画で取り上げられているのが、もうすぐ100kgとご自身もDな人(笑)、古田秘馬さん。 彼の経歴は、かなり特異です。 現在はミュージシャンという肩書きを持ちながら、企業のブランディングや地域活性化のプロデュースを行う。今では恒例となった新丸ビルのイベント「朝EXPO in Marunouchi」も彼のプロデュースです。 社長キャラバンプロジェクト第3回目のゲストは、 今回のインタビューでは、自分の体型をしっかりとネタにしながら、クリエイティビティとビジネスについて、たっぷりと話していただきました。
■株式会社umariは9人のクリエイターが在籍する企画集団 現在、秘馬さんの経営する「株式会社umari」は、彼にとって5番目の会社。 会社に登録しているメンバーは9人いますが、それぞれ、グラフィックデザイナー、ウェブデザイナー、映画監督、編集者、ミュージシャン、など、独立したクリエイターたちがそれぞれの仕事をしながらも、プロジェクトに合わせて、アドホックにチームを組んでいくのです。 秘馬さんは、いろいろな形態の会社を経営してみて、ようやく今の会社にたどり着いたと言います。 関わる人たちのクリエイティビティを発揮して、ビジネスとしても成功させるためには、常時、従業員を雇うという発想は必要なく、プロジェクト毎にチームを組んでいければ良い、ということに気づいたそうです。 “組織の規模が大きくなるとクリエイティビティは下がる”という経験がここに活きています。 実際に、会社の規模を小さくした現在の方が、売上も利益も大幅に増加し、かつ多くのプロジェクトに携われるようになったと言います。
■アイデアは出し惜しみしない もちろん、秘馬さんの活動も、umariの形式にするまで、最初からうまくいったわけではなく、数年前には本当に食べられない時期もあったと言います。 秘馬さんが自ら、“プロジェクト・デザイナー”という肩書きをつくっていることに象徴されているように、日本には、そもそも「企画」や「アイデア」にお金を払う、というカルチャーがなかったのです。 そんな状況で秘馬さんがチャンスを手にしていったのは、無料のアイデアで相手を埋め尽くす事、だそうです。 企画マンはアイデアが勝負ですから、契約前にどこまで出すか、どこからが出さずにとっておくか、を常に考えます。「そのアイデアいただき!」という事はどこの世界でも非常に多くありますから、企画マンはアイデア出しに敏感です。 しかし秘馬さんの鉄則は、アイデアを出し惜しみしない事。 1つのアイデアだけであれば盗まれる事もありますが、次から次へと温泉のようにアイデアを出し続けると、相手はフリーズする(笑)。 そうすると、「じゃあ秘馬さんに全部頼んだ方がいいんじゃないか」という結論になる事が多いのだそうです。 当然、アイデアだけ出してその後契約に至らず、という事もあるそうですが、そんな事は気にせず、とにかくアイデアで相手を埋め尽くし、「自分たちはここまでアイデアは出し続けられない」と言うほど、相手を圧倒する。 こうして、約5年の才月をかけて、「企画」、「アイデア」にお金を出してもらう “プロジェクトデザイナー”としての仕事を確立していくようになったのです。
■自分でマーケットを創るのがクリエイター
秘馬さんが現在関わっているプロジェクトの数は、なんと“33”! クリエイターは“創造する人”という意味を持っているにも関わらず、もらえる仕事を待っている場合がほとんど。 限られた予算の中で、クライアントさんが持っているイメージを実現する事で完結してしまい、それを超えるものを創ることはできない。クリエイターも、自分でマーケット自体を創ればいい、と彼は考えているのです。
しかし、一個人のクリエイターがそんな簡単にマーケットを作れるものなのでしょうか? 秘馬さんのマーケット・クリエイト術は二点のポイントに絞られます。
秘馬さんが立ち上げた、東京・丸の内の「朝EXPO in Marunouchi」は、早起きの秘馬さんだからこそのアイデア。 「こんなにたくさんの人がいるのだから、皆で集まって気持ちのいい朝を有効に使えたら気持ちいいんじゃないか」という気持ちからスタートし、自分で企画を立て、話をして回っているうちにスポンサーがついたプロジェクトだそうです。 「気持ちの良い朝を八ヶ岳で過ごしませんか?」という「日本一の朝プロジェクトfrom 八ヶ岳南麓」も、秘馬さんが八ヶ岳の朝が好きで、通っているうちに地元の友人などとも盛り上り、3年がかりで企画を練りこんだもの。 その活動が注目され、今では各種企業や行政の協力も得られ、旅行代理店のツアー等にもなりました。 自らその場所に行き、その地域の人たちを巻き込み、時には自ら出資をして、マーケットを創造する。心の声に従って、投資すべき案件か検討し、やりたいと思えば、やる。 秘馬さんの仕事は、地域活性化のプロジェクトが非常に多いのですが、必ず最初はその地域に、自腹で行ってみるそうです。 自分でお金を出す事で、「本当にやりたいかどうか」が見えると言います。 また、しっかりと検討して、マーケットが創造できない、という判断を下したら、秘馬さんはお断りする事も多々あるそうです。自治体では特に多い、「予算をとってしまったから、何とかそのプロジェクトを実施しなければいかない」、と言う思考法に反し、「やらない」という判断もクリエイティビティの一つ。 ナットク〜。 そして、売上の約4分の1を新規プロジェクトの開拓にまわしているというから凄いです。
■クリエイティビティを発揮する方法
企画やアイデアが枯渇してしまうことは全くない、と言う秘馬さんですが、クリエイティビティを発揮するために心がけていることを聞いてみました。 ▽古田秘馬的クリエイティビティ発揮術 その1 【身体の自然なリズムに合わせて時間を有効活用する】 秘馬さんの起床は朝5時。 午前中は、そのアイデアに関する企画会議に赴く。そうする事によって、午後をその会議で決まった事の実行に、各自が費やせるのです。 だから実現が早い! 午後は、具体的な落とし込みをする時間。 新しい人に会ったりしてコネクションを広げるのは、主に夕方から夜にかけて。 夜、自宅に帰ったら、リラックスな状態を保ちながら、本を読んだり、楽しくリサーチをしたりする。疲れた夜のうちに無理矢理アイディアを出そうとは、決してしない。
▽古田秘馬的クリエイティビティ発揮術 その2 【反対の発想法をする】 「朝EXPO in Marunouchi」や「日本一の朝プロジェクトfrom 八ヶ岳南麓」は、人を集めたイベントは日中や夜が多いので、「朝早くてもいいんじゃない?」という発想法。 逆転の発想をすることで、おざなりにされていたマーケットが創造されたり、現状の問題点や本質が見えることがある。
▽古田秘馬的クリエイティビティ発揮術 その3 【プロジェクト管理はしない】 秘馬さんの肝は企画・アイデア。 プロジェクトの発案者とは言っても、お金やスケジュール、人の管理などに時間を費やす事はしません。あくまでアイデアを出し続けられるように、プロジェクト管理は他の人間に任せるのです。
▽古田秘馬的クリエイティビティ発揮術 その4 【人間Googleになる】 秘馬さんは、自分の事を「人間Google」と呼びます。 Google やYahoo!のような検索エンジンは、コンテンツを持っていないけれども、情報を欲しい人に他のサイト(コンテンツ)を紹介することで成り立っています。 秘馬さんも、出会った人、面白い情報、思いついたアイデア、全てにタグを貼っておき、必要な時に、「あ、この人いいかも」、「しまってあったあのアイデアはいけるかも」と検索結果を出すのだそうです。 1つの事柄に対して複数のタグを貼っておく事で、一見関係ないと思われていた人やモノ、サービス、地域などがつながり、面白いアイデアやプロジェクトが生まれていく。 たくさんの検索結果(アイデア)を出す事で、クライアントはアイデアに埋め尽くされてフリーズするのです。
お金がついてくるのは後から。 値段も基本的に交渉せず、お客様が払える金額でやる。 満足度の高い仕事を提供しているうちに自然とギャラはあがってくる。 見た目と違って(笑)、一人で身軽に自分の好きな事をやり続ける対価は、キチンと払われているのです。
自分のスタイルを貫いてクリエイティビティを発揮する環境を自ら整え、自分のやりたいプロジェクトを自腹でスタートするのが古田秘馬的なクリエイティブ術。 そんな秘馬さんの残りの30コあまりのプロジェクト、そしてこれから次々に生み出されるプロジェクトは一体どんなアイデアなのでしょう?
いかがでしたでしょうか。
秘馬さんのオフィスは、アロマの香りが漂う、とても気持ちのよい空間でした。 今日も秘馬さんは、日本のどこかで、美味しい地のモノをたっぷり食べながら、溢れるアイデアをシャワーのように降り注いでいる事でしょう!!
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